手取川の豊富な伏流水が大地を潤す、有数の米どころのひとつ。『白山おろし』と呼ばれる冷たい山風が駆け抜ける、石川県白山市。
白山市を拠点とする農事組合法人北辰農産は、無農薬・減農薬の安心安全なお米作りを行ってきました。平成27年からは『稲ほ舎』というブランドを起ち上げ、お米だけでなく無添加の加工品も販売。
「先人の知恵があってこそ、おいしいお米作りを続けられています。」とハツラツと話してくれるのは、代表の舘さんです。
お米作りに新たな付加価値を。
米作りを営む農家に生まれた舘さん。
「小学生の頃から、野菜の種まきや田植えの苗箱洗いなどのお手伝いをしていました。歳を重ねるごとに、出来ることが増えていって、楽しかったです。」
舘さんの父が、地域みんなで農業をやろうと起ち上げた農事組合法人北辰農産は、減農薬で人や稲に優しいお米作りに取り組んできました。
「僕が大学4年生の時に父が亡くなり、大学を卒業後すぐに北辰農産で働き始めました。お米の価格がどんどん下がり、お米作りだけではなかなか厳しい状況でした。お米作りに付加価値を高めたいと考えたタイミングで、店仕舞いをする和菓子屋の老夫婦からお餅をつくる機械を譲り受けました。また、老夫婦からお餅の作り方を丁寧に学ばせてもらったのです。おかげさまで、おいしいお餅の味を引き継ぐことができました。」
こうしてお米作りだけでなく、加工品の販売も少しずつ開拓を進めていくことに。そして30歳で母から会社を受け継ぎ、舘さんは北辰農産の代表となりました。農業の6次産業化が進み、加工品の販売に力を入れていこうと稲ほ舎を起ち上げたそうです。
先人の努力と地域コミュニティに支えられたお米作り。
白山市に流れる手取川。かつては氾濫し易く、洪水の歴史とともに治水事業の歴史も古いという。先人が用水を整備して手取川の伏流水を地域へ行き渡らせました。
「先人の努力のおかげで、途切れない豊富な清流があり、良質な環境でお米作りができています。学校の課外授業で用水の歴史を学ぶくらい、地元では有名なお話しですよ。」と教えてくれる舘さんの表情は誇らしげでした。
また、良質な環境は自然が与えてくれる要素だけではないそうです。
「石川県の農家はとても仲が良いのです。わからないことを教えてくれたり、情報交換をしたり、お互いに助け合える関係性です。農業や経営の勉強会も仲間内で行っています。そうやって農業を盛り上げていこうと頑張る仲間がそばにいます。」先代からの農業に対する熱い想いを持った地域コミュニティが、おいしいお米作りを支えているのですね。
手間をかけて無農薬に挑む理由。
舘さんが代表を務めるようになってからは、減農薬だけでなく無農薬にも取り組んでいるという。
有機肥料で育てる無農薬の稲は、真っすぐ伸びずに芯も強くないのでカメムシの被害を受けたときに機械を入れて作業することができないそうです。手作業でカメムシを取り除いているのだとか。手間をかけながらも、環境に随分と配慮されています。
「僕は幼い頃に田んぼで昆虫を捕まえて遊んでいたのですが、当時と比べると田んぼに生き物が少なくなってきているなと感じています。農薬の影響も大きいと思います。生き物と触れ合える田舎らしい体験ができる環境に戻したい。そのためにも、無農薬で周りの生き物や環境にやさしいお米作りにパワーアップして取り組んでいきたいです。」
素材そのものの味を楽しんで。
お米作りだけではなく、加工品としてもお米のおいしさを届けたいと奮闘する稲ほ舎。
「当社の加工品は、シンプルなものだけを作っています。主役はお米の味なので、素材そのものの味がわかる商品をみなさんへ届けたいです。味を付けてしまうと、当社ならではの製品でなくてもいいですからね。たくさんの方々に手間をかけて育てたこだわりのお米の味を楽しんでもらいたいです。」
先代が残した資源を活かし、工夫を重ねながらお米の美味しさを伝え続けていく稲ほ舎。
SNSなどで、商品だけでなくプロセスも積極的に発信しているそうです!
「稲ほ舎の商品を通して、自然環境や地方に興味がある方や、なにかアクションを起こしたいと思っている人と繋がることが出来れば嬉しいですね。みんなで地域を守っていきたい。お米文化の良さが広く伝われば嬉しいです。」と笑顔で話してくれました。
みなさんもぜひ、稲ほ舎こだわりのお米の味をご賞味ください。