立山山麓から流れる美しい水の恩恵を受け、富山の広い大地で放牧の豚を育てている 悠牧豚(ゆうぼくとん)株式会社。北陸で初めての放牧型養豚事業を夫婦で営んでいます。
「どのような場面でみなさんに商品を楽しんでいただけるかを思い浮かべながら、こだわりの商品づくりをしています!」と熱く語る代表の川瀬さんにお話しを伺いました。

北陸初の放牧豚、誕生ストーリー。

富山の大自然でのびのびと育つ、富山県産のブランド豚“悠牧豚”。放牧の豚はストレスがかかりにくいため、雑味が少なく甘味のある豚肉に仕上がります。風味がまろやかになるというメリットの反面、放牧で育つ豚は太りにくいため経済効率面では難しい点もあるそうです。日本では豚舎での養豚事業が主流となっています。

川瀬さんが放牧型養豚事業に挑戦したきっかけは、福島県での放牧豚との出会いでした。
「僕はもともと農業の経験が無かったのですが、ご縁があって福島県のいちごハウス栽培を営む農業法人で農業経営と農作業を3年間学びました。当時、福島県で50年に一度の豪雪被害が起きてしまい、いちご栽培に大打撃を受けたのです。その農業法人では商品とは関係なく、食物残渣を食べさせるために放牧で育てている豚がいたのですが、この機会に日本ではめずらしい放牧豚を商品化しよう!と提案したことが最初のきっかけでした。」
川瀬さんのアイディアで放牧豚の商品化と販売が始まり、福島県で人気商品となったのです。
「福島県で培ったノウハウを、地元富山に持ち帰りたいと考えました。富山で起業することを決意し、豚たちと共に帰ってきたときは、妻がとても驚いていましたね!」と無邪気な笑顔を見せる川瀬さん。富山県で28年ぶりの新規就農養豚として、2016年に北陸初の放牧養豚事業がスタートしました。

美味しさの先の満足を、お客様へ。

富山県内の飲食店を中心に卸される悠牧豚の精肉は、ほぼ予約販売で終売してしまうほどの人気ぶり。『飲むフランク』や『生ハム』『昆布締め』などの加工商品も大人気です。
悠牧豚のこだわりは素材そのものの美味しさだけではなく、お客様が商品を口に運ぶまでのシーンを思い浮かべた工夫が施されています。


「僕は、お肉が美味しくて安全なのは当たり前だと思っています。美味しさのその先にお客様へどう満足していただけるかを意識しています。」



例えば、溢れ出る肉汁がジューシーな『飲むフランク』は、3本入りの真空状態で販売しています。袋のままボイルできるようになっているので、美味しさが逃げることもなく、お鍋が脂で汚れることがありません。
定番商品の生ハムも、綺麗に取り出しやすいように1枚1枚シートが挟まれています。生ハムが並ぶ食卓は、お祝いの席や人が集まるシーンが多いのではと想像し、その場に集まる人たちに見た目にも美味しいお料理を楽しんでもらいたいと思考をこらしたそうです。

「生産側の僕たちにとっては、数あるうちのひとつの商品のように見えます。しかし、お客様にとっては1分の1の出会いだと思うのです。だからこそ、丁寧な商品をお届けしたいですね。」と言葉を紡いでくれた川瀬さん。小さくもあたたかな思いやりが、みなさんの大切なシーンをより一層彩ってくれているのですね。

農業を通して叶えたいゴールとは。

川瀬さんが農業に関心を抱いた源泉は、息子さんの誕生でした。川瀬さんには、農業を通して叶えたい最終ゴールがあるそうです。
「僕の息子は、生まれながらに半身麻痺というハンディキャップを抱えています。この先の未来を見据えて、ハンデを抱える人たちがのびのびと働ける職業って何だろう?と考えたときに、農業がいいのではないかと思ったのです。今後は農作業部門で障がい者雇用の受け皿を広げ、悠牧豚とパートナー企業での農福連携事業を叶えていきたいです。」

“美味しさ”を届けるだけじゃない、さまざまな価値を私たちに提案し続ける川瀬さん。
悠牧豚の美味しさの先のこだわりとやわらかな風味を、みなさんもぜひご賞味ください。